「Arc B570」を入手し、3か月ほど使用しました!VRChat用途での実力をレビューします。
Intel Arc B570 のスペック
| GPU スペック | Intel Arc B570 | GeForce RTX 3060 Ti | GeForce RTX 3060 | GeForce RTX 3050 | GeForce RTX 5050 |
|---|---|---|---|---|---|
| 浮動小数点 演算能力 | 11.52 TFLOPS | 16.25 TFLOPS | 12.76 TFLOPS | 9.11 TFLOPS | 13.16 TFLOPS |
| VRAM | 10GB | 8 GB | 12GB | 8 GB / 6GB | 8 GB |
| メモリ帯域幅 | 380 GB/s | 448 GB/s | 360 GB/s | 224 GB/s | 320 GB/s |
| 金額目安 (新品)(2026/04) | \ 35,000 | (販売なし) | (販売なし) | \ 30,000 | \ 48,000 |
| 金額目安 (中古)(2026/04) | \ 29,000 | \ 30,000 | \ 38,000 | \ 25,000 | \ 42,000 |
Intel Arc B570 は2世代前のNVIDIA GeForce RTX 3060 より若干性能が劣る程度のグラボで、演算能力やVRAM量を見てもおおよそ妥当な価格帯です。この価格帯でVRAMが10GBのグラボは唯一無二の存在です。ただし、演算能力などの基本スペックは、価格帯が近いグラボと比べて特別優秀でもなく、おおよそ価格相応のスペックです。また、Intel Arc についてはIntel公式がVR非対応である旨を示しており、予期せぬトラブルが起きる可能性があります。そのため、予期せぬトラブルへの対応に不安がある方や、PCゲーム環境のトラブルシュートに慣れていない初心者にはおすすめしにくいGPUです。
Intel 公式声明 Intel Arc GPU はVR非対応

今回のレビュー機種・検証環境
AR-B570D6-E10GB/DF
今回検証に用いたのは玄人志向さんから発売されている Arc B570 です。筆者は中古で入手しましたが、中古市場に全く販売在庫がないので、新規で購入する場合は基本的に新品購入になります。





検証環境
今回の検証は、筆者の検証用PCで行いました。OSはクリーンインストールで環境を構築し、Ryzen 7 9700Xは105Wモードで稼働させています。
検証環境(PCスペック)
| PC 構成 | |
| CPU | Ryzen 7 9700X (PBO:OFF 105W) |
| CPUクーラー | ZALMAN Reserator5 Z36 ARGB |
| GPU | 玄人志向 Intel Arc B570 (AR-B570D6-E10GB/DF) |
| メモリ | DDR5-6000 CL40 32GB×2 (AORUS ARS32G60D5R) |
| マザーボード | ASRock B650M Pro X3D WiFi |
| ストレージ | Force Series MP510 (PCIE3.0 512GB) |
| 電源 | Corsair RM1000x SHIFT |
| PC ソフトウェア | |
| OS | Windows 11 25H2 |
| 電源プラン | バランス ※SteamVR設定で高パフォーマンスに上書きされる |
| ゲームモード | ON |
| ウィンドウゲームの最適化 | ON |
| HAGS ※枠の都合で略称 | ON |
| メモリ整合性 | ON |
Virtual Desktop 設定
VR接続には Virtual Desktop を使用しました。
Virtual Desktop: v1.34.16 ~ v1.34.18 ※2か月間にわたって検証のため
接続:Wi-Fi 6 / WX3600HP
| HMD側設定(STREAMING) | |
| VR Graphics Quality | High |
| Refresh Rate | 90 Hz |
| Bitrate | 固定 200 Mbps |
| Sliced Encoding | ON |
| Snapdragon Game Super Resolution | ON |
| Video Buffering | ON |
| Spacewarp / SSW | OFF |
| Sharpening | 75 |
| Gamma | 1.0 |
| Increase color vibarance | オフ |
| Increase video nomarl range | オフ |
| Streamer 設定(OPTIONS) | |
| Preferred Codec | AV1 10-bit |
| Adaptive quantization | ON |
| 2-Pass encoding | – |
| OpenXR Runtime | Automatic |
| Encrypt local traffic | OFF |
| Automatically adjust bitrate | OFF |



検証結果
一般画質設定(High)でVRChatにログイン
VRChat 設定(検証条件)
| Steam(管理 > 一般) | |
| 起動オプション | –affinity=FFFF -screen-fullscreen 0 -screen-width 1600 -screen-height 900 |
| グラフィックス(基本) | |
| 画面の解像度 | – (VRでの検証のため選択不可) |
| フルスクリーン | – (VRでの検証のため選択不可) |
| 品質のプリセット | 中 |
| アンチエイリアス | 2倍 |
| ミラーの解像度 | フル |
| 影 | 中 |
| 細かさの度合い(LOD) | 中 |
| 視野角 | – (VRでの検証のため選択不可) |
| FPS | – (VRでの検証のため選択不可) |
| FPSの上限 | – (VRでの検証のため選択不可) |
| グラフィックス(詳細) | |
| パーティクルの物理演算の品質 | 中 |
| パーティクルの制限 | オフ |
| ピクセルライトの数 | 中 |
| カメラのニアクリップ距離の上書き | オフ |
| シールドレベル | |
| シールドレベル | なし |
| 快適性とセーフティ(快適性) | |
| パーソナルスペース | オフ |
| アバター(アバターの最適化) | |
| 最適化されていないアバターのブロック | ブロックしない |
| 最大ダウンロードサイズ | 200MB |
| 最大非圧縮サイズ | 500MB |
| アバター(アバターのカリング) | |
| アバターを表示する距離 | オフ |
| 表示するアバターの数 | オフ |
筆者が最低限確保したいと考えている、片目あたり約2.5K相当の画質設定でVRChatにログインしました。Safetyやアバターカリングを一切使用していないため、非常に無防備で負荷が高くなりやすい設定です。一般的にはこれらの設定を無効化することは推奨されません。あくまでテスト用の設定としてご覧ください。
身内イベント参加、パブリックインスタンスでの会話、フレプラインスタンスでの雑談といった、一般的な利用シーンでの結果を記載します。
VRCMark v2 他GPUとの比較
VRChat上で作成されたベンチマークワールド、『VRCMark v2』 のデータを取得しました。また、 筆者が運営しているクローズドコミュニティ『VRChat 機材研究部』でメンバーに協力いただき、様々なPC構成の結果も収集しました『VRCMark v2』にはGPU負荷を測定するG1・G2のテストシーンがあるため、そこで取得した平均fpsを比較に使用しました。なお、CPUやその他の条件を完全にそろえた検証ではありません。ただし、CPUボトルネックが発生している可能性があるデータは除外しており、ラスタライズ性能の数値とおおよその相関があることから、少なくとも、傾向を見る用途としては大きく外れた結果ではないと考えています。
他GPUとの比較)RTX 3060より若干低いFPS



結果としては概ね期待通り、RTX3060より若干劣る程度のFPSでした。RTX 3060より安価であることを踏まえると、コストパフォーマンスは悪くありません。
注目すべき比較対象としては、RTX 3060 Ti は、G1においてB570より10fps以上高い結果を出しています。。B570は10GBのVRAMを搭載しているため、8GBのRTX 3060 TiよりVRAM容量の面では余裕があります。ただし、通常時のFPSには体感できる程度の差があり、B570は伸び悩む印象です。そのため、人が多いインスタンスに行かないなど、VRAM使用量が少なく済む遊び方の人はRTX 3060Tiの中古を選択肢に入れてもよいかもしれません。※もちろん、中古品である以上、劣化や保証面のリスクはあります。
一般的な利用シーン①(フレンドお誕生日会 フレンド+・約12人)

軽量なワールドで開催されたお誕生日インスタンスにJoinしました。12名ほどが参加している環境で、滞在中の平均fpsは49でした。VRAMは10GBに対して9.5GB 前後を上下していました。インスタンス内で談笑をする分には、致命的な問題は特にありませんでした。12人全員で集合写真を撮影した際も、撮影直後にVRAM不足と思われる短時間のガクつきはあったものの、4K解像度で問題なく撮影できました。
一般的な利用シーン②(フレンド+・5人ほど)


比較的アセットが多いチルワールドのフレンドインスタンスで、ミラー前に集合している際のFPSを確認しました。ミラーオンだと30fps前後でしたが、ミラーを解除すると45fps程度までFPSが向上しました。その時にインスタンス内にいたメンバーのアバターは、Very Poor の中でも比較的重めのものでした。全員が最近発売された衣装を複数組み合わせた改変です。
一般的な利用シーン③(パブリック・フジヤマ・30人程)


30人ほどのユーザーがいるパブリックのフジヤマインスタンスでのFPSを確認しました。FPSは向いている方向によって大きく変動し、ユーザーが密集している方向を向くと25fps程度まで落ち込みました。一方で、人が少ない方向を見ると50fps程度まで向上しました。
なお、SteamVRの「オーバーレイレンダリング設定」が ”高” だと、SteamVRのダッシュボードを開いた際に極端にFPSが低下し操作が困難になりました。「オーバーレイレンダリング設定」はSteamVRのダッシュボードを開いた際の負荷にかかわる設定で、筆者の経験上、ミドルハイクラス以上のGPU、具体的にはRTX 3060 Ti以上ではこの現象を確認していません。ただし、多くのVRChatユーザーがこの設定の重要性を指摘しているため、Intel Arcに限らず、GPU性能に余裕がない環境では、体感に大きく影響する設定だと考えられます。
写真撮影(Virtual Lens 2 x8 アンチエイリアス設定&4K撮影)
自分1人のインスタンスで、おはつい用写真の撮影をしました。カメラギミックには「Virtual Lens 2」を使用し、x8アンチエイリアス・4K撮影設定で撮影しました。VRAM不足で不安定になりやすく、快適とは言えません。筆者が確認した範囲では、VRChatがフリーズして落ちることも度々ありました。高画質な写真撮影を快適に行うには、明確に力不足だと感じました。
PCVR用途でのAV1 エンコードの効果
B570は、AV1エンコードに対応しているためQuest 3やPico 4 Ultra を利用する場合に、より高画質に見えるという方もいますが、筆者には違いがほとんどわかりません。以前、RTX 4090のレビューでAV1エンコードと他エンコードの比較も行いましたが、筆者の環境では、エンコード方式による差を明確には識別できませんでした。頭を激しく動かした際に差を感じるユーザーもいるようですが、劇的な差があるほどではなく、AV1エンコードに過度な期待はしない方がよいと感じました。
OVR Advanced Settings の設定画面が表示できない!(回避策あり)

Intel Arc B570 において、 OVR Advanced Settings の設定画面がSteamVR上で表示できません。そのため、以下の手順に沿って、 OVR Advanced Settings をデスクトップで起動する必要があります。
回避策
- HMDとPCを接続する(Virtual Desktopなど)
- SteamVR を起動する
startdesktopmode.batを実行し、OVR Advanced Settings をデスクトップモードで起動して、デスクトップ画面上で設定を行う- 設定を保存した後、SteamVRを再起動し、OVR Advanced Settings をVRスタートアップで起動する

まとめ)予算3万前後なら選択肢に入るが、ハイリスク
| ✅ Good | ⚠️ Bad |
|---|---|
| 価格相応のFPSは出る | Intel公式がVR非対応としているため、予期せぬトラブルのリスクが高い OVR Advanced Setting の設定画面が開かない |
B570は実利用でも大きな問題は確認されず、おおよそ価格相応の性能で稼働することが確認できました。ただ、Intel公式がVRに非対応である旨を明言しており、予期せぬトラブルのリスクが非常に高く、VRChat用途では積極的にはおすすめしにくいGPUです。SteamVRやVirtual Desktopのアップデートによって、ある日突然正常に動作しなくなるリスクもあります。誰も動作を保証していないわけですから。予算が限られている場合には候補に入るものの、安定性やトラブル時の情報量を重視するなら、GeForce系GPUを選ぶ方が無難です。
結論として、B570は「安価で10GB VRAMを搭載した面白い選択肢」ではありますが、「VRChat用GPUとして万人におすすめできる製品」ではありません。トラブルシュートを楽しめる人なら候補に入りますが、安定性や情報量を重視するなら、GeForce系GPUを選ぶ方が無難です。


